「ごめんねお姉さん。無理言っちゃってー。仕事の方大丈夫でしたー?」
笑顔だったのは一瞬、取り敢えず入れろと鬼の形相になった糸をひとまず車の中に招き入れ、丁度よく持っていたタオルを手渡す。
「ありがとーございます。まさかの土砂降りでびっくりしたー」
「えっと、糸ちゃんが私を呼んでくれたの?」
「あれ? このヘタレたおっさんから何も聞いてないですか?」
「へ、へたれているかどうかはさておき。取り敢えず私を呼んでいたとだけ」
「うっわ。それは怖かったよね。こんなヘタレたおっさんに誘拐されたとか」
「ちゃんと断りは入れてるよ」
「説明してない時点でダメじゃん」
「僕もあなたから何も聞かされてないんだから、何も話せるわけがないでしょう」
と、なんだか親しげに話している二人だが、なんと糸は了安の姪っ子に当たるらしい。
ああ、道理で。整った顔は遺伝だな。
「随分仲が宜しいんですね」
「伊代クンが僕にヤキモチを妬いてくれる日が来るなんて!」
「仲がいいっていうか、腐れ縁?」
(随分と年齢差のある腐れ縁だな)
「人生相談? 恋愛相談? する仲みたいな?」
「ふふ。そうなんですね」
想像するだけで、それはとても微笑ましかった。



