彼のことだから、てっきり「本当にねえ」的な冗談まがいの言葉が返ってくるとばかり思っていたのに。
「いいんだよ。それが、僕にできる――だから」
「……先生?」
突如土砂降りに掻き消されたその言葉を尋ねることなく、高級車は目的地へと到着した。
「先生。ここって、もしかしなくとも」
「聞くの忘れてたけど、伊代クン招待券持ってるよね?」
「持っていなかったらどうするおつもりだったんですか。というか、どうして先生がそのことをご存じなんですか」
「君の夫にわからないことなんてないでしょう」
完全に通常運転へと戻った了安が連れてきてくれたのは、とある都立高校。今は、絶対に来るなと言われていた学祭の真っ最中である。
「来たかったでしょう?」
「それは……確かに、来られるものなら来たかったですが」
けれど、弟が嫌がることはしたくなかったと、言い切る前に窓ガラスをコンコンとノックされる。
まさかもう来たことがバレたの?! と慌てて顔を上げると、そこには大雨の中傘を差してこちらに手を振る美少女――糸の姿が。



