今までいくつもヒット作を世に作り出している了安は慣れた様子で対応しているが、隣に立つ新堂にとってはこれが初めての快挙。まだまだ始まったばかりだが、これからもっと、彼や作品自体を盛り上げていってくれるだろう。
それが嬉しいはずなのに、何故か寂しい気持ちが膨らんでいくのを抑えきれなくて、主演俳優と了安の質問時間になってから、お手洗いを理由に一度会場を退席した。
「楽しみだな。先生の映画」
沢山の人たちが、これからに向けて今を全力で生きている中、どうしてか自分だけが取り残されたような感覚がして、思わず足を止める。
これから、一体自分はどうしたいのか。何がしたいのか。どんな人間になりたいのか。そもそも、期限が迫る正社員への回答でさえ、まだ答えを出せないでいた。
「……あ。雨降りそう」
そんな状況に置かれていても、気持ちが落ち着いていられるのはもしかしたら、自分の見ている世界が変わったからかも知れない。



