「あの、一石さん」
「ん?」
今思っていることを、自分の言葉にすればいい。たったそれだけのことが何故か難しくて、上手く言葉が落ちてこない。
逸る気持ちを抑えて、ゆっくり深呼吸する。
「この後、何かご予定がありますか?」
瞠目する彼を、真っ直ぐに見つめた。
「……ない、けど」
「よければ、この後の時間を私にいただけないでしょうか」
「…………」
黙り込んでしまった一石に、難しければ大丈夫ですと続けると、彼は慌てて待ったをかけた。
「そうじゃなくて。……まさか、言おうとしてたことを先を越されると思ってなくて」
あさっての方を見ながら、口を手で覆い隠して、彼はぼそりと呟く。
「どっか、行きたいとこでもあるのか」
「と、特には。一石さんが行きたいところで、私は全然」
「俺も特にはないけど、取り敢えず誰にも邪魔されないところには行きたい」
「えっ?」
「だめ?」
「……その聞き方は、ズルくないですか」
「ズルいというか気持ち悪いけどね。相手アラフォーのおじさんだし」



