青い青い空


 どれだけの間固まっていたのか。柱の陰から「そこで口づけの一つ二つしろよー」と野次が飛んできたところで、ようやく金縛りが解けた。

 今は、本当は荷物持ちを買って出てくれたという一石が、今度は私のドレス以外の会計をしに行ってくれている。正直あの現場を目撃されたのが従姉且つ専務だとか、気まずくて仕方がない。


「今頃あいつ、ほっとしてるわよ」


 まだ熱を持つ頬を手で扇いで冷ましながら、どうしてですかと何の気なしに返す。


「伊代ちゃんのドレスは自分が選ぶって言って聞かなかったから。勿論伊代ちゃんの気持ちは最優先するつもりだったけどね」

「っ、え?」


「この店にだって、何回足を運んだか知れないわ。ギリギリまで悩んでたみたいだし」と、肩の荷が下りたような顔をして、佐裕子はほっと安堵の息を吐いていた。


「ごめんなさいね。姉のような立場だと、どうしても放ってはおけなくて」

「そんなこと。寧ろ私は、いろんなことをしてもらってばかりで」

「伊代ちゃんが申し訳ないと思うことなんか一つもないわ。あいつがやりたいようにやってるだけなんだから。それでも迷惑だったらはっきり言わないとダメよ」

「め、迷惑だなんてとんでもないです」

「ならそんな顔しないで、ドレスを着た時みたいに喜んでいて? 伊代ちゃんが喜んでくれることを、あいつはただしたいだけなのよ」