訂正をする前に由良野はさっさと部署へ戻ってしまうし、一石は一石でさっさと部屋に入ってしまうしで、私も言われるままにもう一度資料室へと戻る。
「えっと、一石さん? お探しの資料って……」
「ちょっと待ってくれ」
そして戻ったら、何故か一石は両手で顔を覆った。何かあったのかと尋ねてみれば「あったのはお前の方だろう」と言われる始末。
「何かありましたっけ?」
「泣くほど由良野に相談したいことがあったんじゃないのか」
「違います違います。由良野さんに相談とかないですって」
「それはそれで由良野がかわいそうだが」
「なら二人でこそこそ何をしていたんだ」と横目で問われて、何と答えるべきか悩んだ。仕事中に上の空になるほどのことがあったのかと、心配を掛けたくなかったから。
「えーっとですね」
「ちょい待ち。やっぱ今のなし。忘れてくれ」
けれど、そう言って僅かに頭を抱えた一石の耳が赤くなっている気がして、一体何が聞きたいのかがようやくわかる。



