ランチタイムの食堂で、何を抱き締め合っているのか。食べ終わったならさっさと席を譲ってくれと言わんばかりの冷たい視線を送られたが、それもあまり気にはならなかった。周りの視線よりも、ぼろぼろと泣いている彼女の方が、ずっと大切な存在だから。
「任せとけ黒瀬ちゃん。どん引き男は、この私がとっちめてあげるから」
「ああ違う違う。引かれたのはこの話じゃなくて」
「ちょっと、黒瀬ちゃん?」
「こんな話、心の友の青崎ちゃんを差し置いて、あんな奴にするわけないじゃない」
まるであれだけ泣いていたのが嘘みたいにケロッと笑った黒瀬は、席に戻って冷めてしまった唐揚げ定食に再び口を付け始めた。
「実はさ、この間例のライバル社の社長息子と会ったのよ。会ったというか、まあストーカーされてたんだけど」
「それこそ聞き捨てならないんだけど、久賀野くんは一体何やってるの。口先だけの男なの」
「お互い仕事もプライベートもあるし、流石に四六時中一緒にはいないよ。というかあたしが無理」
「そ、そっか」
「だから、案の定ガードの甘くなったそこを突かれて襲われかけたんだけど」
「な、なんだってえ?!」



