青い青い空


 その時、一陣の風が吹いた。被っていた帽子を吹き飛ばすだけでは足らず、伸び始めた髪をそれはもうぐちゃぐちゃにして。

 でもそれは、まるで母が――違うわよと、否定しているかのようだった。


(あのね。私、元気だよ。病気に負けず元気にやってる。今は、毎日がすごく楽しいんだ)


 今度は、穏やかな風が頬を撫でた。まるで、その続きを催促しているかのように。


(いろんなことがあったよ。悲しいこともつらいことも、お母さんのところに行きたいって思うことも、数え切れないくらいあったの)


 それでも今こうしてここにいられるのは、沢山の人に助けられたから。支えてもらえたから。


(だから今度は、私がそんな人になりたいなって思うの。……無謀だって、そう思う? 私も、私なんかにできるわけないって、今でも正直思ってるんだけど)


 それでも頑張ろう、頑張りたいって思えるようになったのは、ほんの小さな勇気の欠片のおかげだ。


「……なんだよ」

「ううん。大きくなったなあと思って」

「お前は縮んだな」

「まだ縮むには早いと思う」


 本当に、諦めなくてよかった。