思い返してみれば、母は準備をした上でこの世を去っていた。死んだ後どうすればいいのか、何をすればいいのか、どれだけ費用がかかるのか、それをどこから工面すればいいのか。その全てを。
だから、母が還らぬ人となり、そして海へと消えていったのは本当にあっという間だった。おかげさまで気持ちの整理などできないまま、かなり長い間塞ぎ込んだものだ。隣にいる二人には心配をかけたに違いない。
(遅くなってごめんね。お母さん)
海に向かって手を合わせながら、心の中で母に話しかける。
取り敢えず最初に、恨み辛みを散々並べ立てた。言ってもいいくらいには、母は実の娘に対して内緒にしていることが多すぎたから。
(全部聞いたよ。お母さんは、もしかしたら最後まで聞かせたくなかったのかも知れないけど、私は聞けてよかった)
母を通じて、今まで擦れ違っていた家族と、こうして一緒に手を合わせることができたのだから。



