でも、できなかった。なかった。応えられるだけの力が。自信が。私の中には、何もないから。
『この本の続きは持ち出し禁止でね、編集長クラスじゃないと閲覧不可になってるんだ。だからもし続きが気になるなら、君が入社して編集長以上のクラスになるしかない』
『それ、ほぼ不可能じゃ』
『そうだね。でも俺が、必ず読ませてあげる』
『龍ノ平さん……』
どうしてこの人はそんなことが言えるのだろう。不確かな未来に。可能性の低い未来に。
『俺が編集長になったとしても、流石に部外者には見せられないだろうから、その辺は……ね?』
『それくらいは察しますけど』
『ありがとう。うん。やっぱり君には読んで欲しいな』
『読みたいのは、山々ですけど』
『本当? だったら、俺と一緒に仕事をしようよ青崎さん』
『でも。私には……』
声が震えた。膝の上に置いていた指先が、体が、過去に固まって動かない。
……気持ちが悪い。胃の奥から、蠢くように這い上がってくるそれが。ぐにゃりと歪んだ色のない世界が。



