今一番気にしていると言っても過言ではない話を掘り返されて、動揺するなと言う方が無理な話だ。
「おい。あれに言い寄られても駄目なのかよ」
「い、言い寄られては……」
いないとは、到底言えないけれども。
「どんだけ理想高えんだよお前。あれだけいい男引っかけといて。まさか、歳の差気にしてんじゃねえだろうな。気にしてる場合かよ」
「そ、そんなことは決して」
「お前も言ってたじゃん。いい男なんだろ?」
「それは……」
「一途そうだもんな、龍ノ平さん」
「ど……」
頭が回っていないからか、昨日話したこともすっぽ抜けていたのだろう。だから、『どうして、そんなことを知っているの』と、本当はそう言いかけた。……それ以外に、あるわけがない。
俯く私に言いすぎたと思ったのか、それともとんちんかんなことを思ったのか、「もしかして好きな奴いんの」と遠慮がちな声がかかる。
「噂を信じてるわけじゃねえけど、男が多い職場なんだろ? 気になる奴の一人や二人いねえの」
「ど、……っ」
またおかしなことを言いそうになって、慌てて口を噤む。左手の薬指は大抵売約済みだよと、洗い物に逃げながら。



