『……【青い空】?』
以前彼からもらった本は、ついこの間掃除した時に見付けていた。それを見ていたからか。彼が取り出した同じ本に違和感を覚え、思わず顔を上げる。
『あいつの本だよ。紛れもなくね』
『……でも、なん……』
その先の言葉は、出てこなかった。
本の帯に、その答えがもう書いてあったから。
『あの頃の君に話そうか迷ってはいたんだ。世に出ていれば自ずとわかることだし、隠していたわけじゃないんだけど』
『あの時はまだ、話さない方がいいかなと思って伏せていたのは本当』と、彼は苦い顔で天井を仰ぐ。
今まで覚えてすらいなかったのに。それは、あの時顔に影が差した表情と、よく似ていた。
ザアザアと、雨が、店の窓ガラスに強く打ち付けている。
『君が会社に持ってきてくれた数週間前から、実は連絡が取れなくなっていたんだ。人と関わることが苦手らしくてね。担当の俺との遣り取りも、初めて会ったきりほぼメールで済ませてた。締め切りには十分過ぎるほどいつもハイペースで原稿くれてたから、俺としては何の問題もなかったんだけど。おかしいなと思って、あの時ばかりは直接出向こうとしていたんだ。……その数日後、だったかな』
――彼の、訃報を聞いたのは。



