広夜が身内の人間でよかったと、心底ほっとしていた私の名前を、彼はそっと呼ぶ。
「これから娘とどう接していけばいいのか。息子しか知らない僕は、少し不安に感じることもありました。結衣子さんを亡くしてしばらくは、今にも消えてなくなってしまいそうなほど伊代さんはとても脆く見えましたから。僕が大切に、そして守ってあげないとと」
「でもね」と、彼は目尻に皺を作って微笑んだ。
「知らない間に伊代さんは強くなっていました。もしかしたらあなた自身も気付かない間に。守ってあげなくても、受け入れるばかりではなく、震えながらも誰かのために戦おうとする姿勢は、誰にも真似できるものではありません」
「僕の自慢の娘です」そう言って、彼は至極満足そうに随分前から空になっているビールを呷ってから、もう一度私の名前を呼んだ。
「宵のために勇気を出して戦ってくれてありがとう。伊代さん」
「広夜さん……」
「今日は、頑張ったご褒美にハイパーカップを買ってきたので、よければ食べてください」
「あ。……ありがとう、ございます」



