どうか、彼にはこのことを話さないで欲しい。
そうお願いしようとしたところで、「悪く思わないでやってください」と彼は、今一度持っていた缶ビールを呷った。
「実の息子ながら、難儀な人間になったものです」
「……私に、何かできることはないでしょうか」
「宵が何を言ったところで、伊代さんが重荷に感じることはありませんよ。何かあれば僕がすぐに対応しましょう」
「でも……」
「すぐにはもしかしたら変わらないかもしれません。けれど、しばらく放っておけばそのうち変わるでしょうから」
「……宵くんがつらそうな顔をすると、私もつらいんです」
小さく食い下がってみるが、彼はただ「そうですか」と再びビールを呷るだけ。私に解決できる問題ではないらしい。
「あれは、〝家族〟をとことん嫌ってます。誰よりも〝家族〟になることを強く求めていますから」
落ち込んだ私に痺れを切らしたのか、まるで謎かけのように広夜はそう告げた。
「あの。どういうことですか?」
「そもそもの愛情というものに酷く飢えているということです。それが、たとえどんな形であれ」
そう言われて気付く。幼い頃に、二人の母をなくした彼が知っているのは、父からの愛情だけだと。
「できるかどうかわかりませんが、もう逃げないって決めたので、頑張れるだけ頑張ってみます」
「伊代さんは伊代さんのまま。素直な気持ちであいつのことを愛してやってください」



