ずっと、なりたいと思っていた。ずっと、誰かの言葉で聞きたいと思っていた。
「そう思ってくださって、ありがとうございます」
「伊代さん?」
今まで知らなかったことがわかって、黙っていたことを教えてくれて、そしてこの人だけでも『家族』と言ってくれて。……もう、それで十分。今までとは比べものに張らないくらい幸せなはずなのに。
“――お前なんか、家族じゃない”
ほんと、欲張りだなあ。
「先程、宵と話をしてきました」
見透かされたのかとドキリとしていると、「ちゃんと伊代さんに謝ったのかと、頭に拳骨を食らわしながら」と言うので、広夜の意外な一面に思わず面食らう。
「ちゃんと宵は謝ったでしょうか」
「は、はい。もう、これ以上ないほど」
「宵から聞きました。家族の心配をするのは当たり前だと、伊代さんに言われたと」
「あ、……はい」
何か不味いことを言ってしまっただろうかと身構えていると、彼はテーブルの上に置いてあった缶ビールを引き寄せながら呟いた。
「宵が、何か言ってしまったのでしょう」
「そ、そんなことは」
「生まれたての子鹿のように震えられては、説得力はありませんよ」
「す、すみません」



