自分か、息子が作ってくれた料理以外は、人の手が極力加わっていないような食事しか取れない体になっていたのだと、広夜は申し訳なさそうに口にする。
「そんな。すぐに言ってくだされば……」
「それでも、すぐに治せると思ったんです。僕は外科医ですが、どうしてそうなってしまうのか、メカニズムとしては理解していたので」
けれど、いくら経っても、どれだけのことを試しても、経過は酷くなる一方。食事だけでなく、部屋や衣服にまで何かあるのではないかとまで錯覚を起こすようになった。
「そこまでつらい思いをしていたのに、どうして」
「強いて言うなら、僕が欠陥人間だからでしょう」
「そんなこと……!」
「大切な娘に、そんな軟弱な父親だと思われたくはなかった」
「広夜さん……」
「そんな、ただの身勝手なプライドで、あなたをたくさん傷付けました」
彼は、今までのことを何度も何度も謝ってくれた。似た者同士だったからこそ、どんなことに私が傷付いていたのか、いやというほどよくわかっていたのだろう。それでも今まで言えなかったのは、医者として男としてそして父として、彼の中にも譲れない一線があったから。
「今更になってこんなことをと、思われても仕方がないですが」
「そうは思わないと思ったから、広夜さんは話してくださったんですよね」
「伊代さんがやさしいことはよく知っています。でもそれ以前に、伊代さんは僕たちの家族ですから」
「家族……」



