『そうして今、ここでアルバイトをしているというわけだね』
『復帰したのはほんの数日前なんです。なので今は、十年前の記憶と闘い中でして』
そんな冗談にくすっと笑ってくれながら。
『でもそれなら納得。道理で全く会わなかったわけだよ』
『以前から利用されていたんですか?』
『そろそろ大学卒業するかなーとか。またそのタイミングで、勧誘できたりしないかなーとか』
『ま、冗談はさておき』と彼は言うけれど、きっと冗談などではないのだろう。足繁く通ってくれていたのだ。他でもない、私に会いに。
『君に、もう一度会いたかったのは本当なんだ』
そうして彼は、鞄の中から黒い袋を取り出した。大事そうにその袋から、一冊の本を取り出す。



