「……幻滅、しましたよね。そんな彼女の娘が、こんなだったこと」
気付けば弱音が、口を突いて出ていた。
「伊代さんは、結衣子さんから何も聞いていなかったんですね」
「……どういうことですか?」
「確かにこのご縁を逃したくないとは思いましたが、結婚するとは僕も思ってはいませんでしたよ。結衣子さん、僕の一回り以上も上でしたし」
(天国まで今のが聞こえてないことを祈るしかない)
「僕と結衣子さんがお付き合いをしたのは、二人の利害が一致したからです」
「利害?」
「僕は、安心できる家庭で宵を育ててあげたかった。結衣子さんは、伊代さんの父親になってくれる人を捜していた」
「……お二人は、好きで結婚したのではないのでしょうか」
責任を感じる震えた声に、広夜は小さく首を振った。
「勿論好きでしたよ。でもそれ以上に、子供たちのことを愛していました」
不安げに揺れる瞳に、「まだ言葉足らずですね」と彼は再び口を開く。
「僕が、伊代さんのお父さんになりたくて、結衣子さんと結婚したんですよ」
彼が、こんなことで嘘をつくわけがない。それがわかっていながら、長い歳月のせいで俄かには信じられない。
「結衣子さんに何度プロポーズしたかわかりません。僕は振られっぱなしでしたから」
「え? 利害が一致したのでは……」
「どこかのタイミングで思ったのでしょうね。僕は、伊代さんの父親に相応しくないと、幾度となく突っ撥ねられました」
僕と伊代さんが、びっくりするぐらいよく似ているから――と。



