(……滋養強壮とはちょっと違うよね。元気溌剌とも違うだろうし)
下準備が終わり、洗い物をしながら再びスマホで検索していると、風呂から広夜が帰ってくる。首にタオルをかけ、冷蔵庫から缶ビールを取り出し――プシュッ。酒を飲みながら夕食を準備するのが彼のスタイルのようだ。
そんなことも知らなかったなと、エプロンにスマホを収めて洗い物に専念する。本当は上がる前に片付けておきたかったのだが、検索していたらすっかり遅くなってしまった。
只管空気になろうとしているこちらには見向きもせず、広夜は手際よくレンジと小鍋を使って夕食を温め直していく。邪魔だろうから、ある程度洗い終えたらお暇しようとしていたところで、「伊代さん」と声がかかった。
「戴き物の桃があります。切るのでよければ食べていってください」
「え……?」
何年か振りに呼ばれた名前にも驚いたが、まさか引き留められるとは思ってもみなかった。
お言葉に甘えて、広夜が食事をしている目の前で、切り分けてくれた桃を食べる。持って帰ってきたばかりの桃のやさしい甘さが、傷に染み渡っていく。
「美味しいですか」
「あ。はい、すごく甘くて」
「それはよかったです」と、彼は再び食事に戻る。その表情はどこか、少しだけほっとしているように見えた。



