月日はあっと言う間に流れ、高校を卒業。大学を経て、一般企業へと就職。数年後に、訳あってその会社は退職。
そして再び同じ喫茶店で働くことになった、その数日後のこと。何の縁があってか。一石と再会したのは、ある大雨の日のことだった。
『もしかしなくとも青崎さん? 随分痩せて……って。これセクハラか』
『ふふ。その節は、大変お世話になりました』
『いやいや、なったのこっち』
どうやら彼は、今この喫茶店の常連になっているらしい。会社の目と鼻の先にあるし、社食が間に合わなかった時は、ここを利用しているのだとか。
『どうして辞めたの? 人間関係のトラブルは基本無縁そうだから、仕事内容が合わなかったとか、断れなくて仕事をいっぱい抱えちゃったとか?』
貴重な休み時間にも拘わらず、彼は興味津々に私の話を聞いてくれようとしていた。
『あはは。まあ、いろいろありまして』
『いろいろ……か。うん。社会人になるとさ、ほんといろいろあるよねー』
でも彼は、そうやって濁した私にもただ笑ってくれた。それだけを言ってくれた。本当にそれだけ。
言葉そのものを受け止めてくれたこと自体が、当時の私にとってどれだけ有難かったか。心強かったことか。



