機嫌の悪くない彼を見るのは、一体何年振りだろう。
「んなじっと見なくても、毒なんか入れやしねえよ」
「そんなこと思ってないよ」
洗濯物や部屋の掃除は各自でがルール。風呂掃除も今朝済ませてしまっていたため、あっという間にすることがなくなった私は、ダイニングテーブルに大人しく着いた。
「はっ。どうだかな」
「ただ、何作ってくれてるのかなって」
「鶏じゃが」
(ラインナップからして、てっきりチキンカレーかと)
しかし、そのどちらであったとしても、それは私の好物。せっかく作るのに、父親の好物でなくていいのだろうか。
医者である広夜は、多忙のためあまり家で食事を摂ることはない。食べている姿を目撃する時は大抵息子の宵が作った時か、それ以外で言えばせいぜいレトルトのカレーの時だけだ。
せめて時間がある時でも構わないから、栄養のある食事を摂ってもらおうと、今まで幾度となく弁当を用意したり栄養満点の夜食を用意したりしたが、それに手を付けられることは一度もなかった。
家事を各自ですることも、広夜の提案だった。
「おい鼻水」
「は、鼻水じゃない」
「もう出すなよ。面倒くせえから」
「……出そうな顔してた?」



