「つかお前、あれだけ言いたい放題言われて、よくキレなかったな。流石は欠陥人間」
無言を返す私に、呆れた様子で宵はため息を吐いた。
「ああ、そうか。全部図星だったから言い返せなかっただけか」
震える手を、肩を、煩わしそうに眺めながら。
“いい? 伊代。泣いたらそこで終わりなの。負けを認めたも同然。絶対に、負けたくない相手には涙を見せちゃ駄目よ”
でも。おかあさん。こんなの、ぜったい勝てっこないよ。
「もう終わったのかよ」
「ま、だ」
「だったら早くしろよ」
「う、ん」
震える手を懸命に動かしながら、嗚咽が出そうになるのを何とか堪える。
動画は最後、弟が先生方に取り押さえられる。けれど、それまで誰一人として、弟が彼を殴るのを止めに入ろうとはしなかった。巻き添えになりたくない――もしかしたら、そんな風に思っていたのかもしれない。
でももし、違う理由があったとしたら……?
音声は最初から最後まで雑音などで聞き取りにくく、彼らが何を話しているのか、その全てを知ることはできなかった。けれど。



