善は急げと、大急ぎで昼食を掻き込んだ久賀野は「んじゃ、結婚の報告してくっかー」と、何故か腑抜けてしまった黒瀬の手を握って引き摺るように立ち去って行った。
《今度お前にもしてやろうか?》
昼食を食べ終わった頃に届いた内容には、〈死んでもお断り〉と即レスしておく。
(これで、ひとまずは安心かな)
編集長に嘘がバレた時は大変だろうけど。
そう思いながら、今日もまた日課の読書に精を出そうとした、その矢先のことだった。
「あ。いたー! 青崎さーん!」
「し、新堂くん」
食堂の入り口で、こちらを指差しながら叫んだ彼は、慌てた様子で駆けてきた。
そして、彼に返事をしていないことをたった今思い出した。最近いろいろありすぎたにしても、失礼過ぎるにもほどがある。
「よ、よかった。すぐ見つかって……」
「ど、どうしたんですか?」
目の前で打ち上げをドタキャンしたことも謝らなければと思っていたが、どうやら慌てた様子からして緊急事態のよう。謝罪はひとまず後回しにした方がよさそうだ。
「引き継ぎで、何か困ったことがありましたか?」
「あ、引き継ぎはですね、順調なんですけど、ちょっと二三聞きたいことが……」
「って、そうじゃないんですよ!」そう言った彼は、ハッとした様子で周りを窺った。どうやら今になってようやく、自分の声の大きさに気が付いたらしい。



