そして彼は、鞄の中から一冊の本を取り出した。
『名前は、古葉 龍青。君が届けてくれたのは、その本の続きでね』
『続き?』
しかしその本――【青い空】には、巻数や上下、サブタイトルですら付いてはいない。
『俺もまさか、続きを書いているなんて思いもよらなかったよ』
一瞬、彼の顔に陰ができる。ふと窓の外を見上げると、太陽が雲に覆われていた。だから、きっとそのせいだろう。そう、思うことにした。
『実の話、上には止められている。でも俺は、この続きも本にしてやりたい』
『その、どうして出せないんですか?』
『続きは一冊の本にも満たないんだ。それに、ちょっと理解しがたいところがあってね』
詳しいところはわからない。でも、それがすごく難しいということだけは、よく伝わってきた。
『でもさ、君も気にならない? 彼がここで、どんな小説を書いていたのか』
毎日のように通っていたあの彼が、まさか小説を書いていたなんて思いもよらなかった。でも顔を知っているからこそか、彼が書いていたものを読むのはどうしても気が引けた。



