朝食を済ませ、出勤する一石の見送りに店先まで出る。かおんが片付けたのか、落ちた植木鉢は綺麗さっぱりなくなっていた。
「龍青に、感謝しねえとな」
夏の青空に目を細めながらぼそりと呟く彼に、そうですねと小さく頷きながら、私も同じように空を仰ぎ見る。
けれど隣に立つ彼は「そういう意味で言ったんじゃねえよ」と、また先程と同じような言葉をこぼした。
「どうしようもない奴だったんだよ。手が付けられないほどに」
「一石さんがですか?」
「自分の思い通りにいかないと気に食わないし、沸点低いから喧嘩ばっかりして。今思えば、どれだけの奴らを傷付けてきたのかわかんねえ。そのくせ自分を表現するのが苦手で、誰かとどうこうできるなんて死んだって思えなくて。……何で俺、こんなクソみたいな世界で生きてないといけないんだよって。そんなことばっか考えてた」
苛立ちとともに紡がれていく言葉の中に垣間見える寂しさが、やっぱりどこか他人事とは思えなくて。
気付けば、でも今はそうじゃないんですよね? とこぼしていた。
「いや、割とそうだな」
「全然そうは見えないですよ」
きっと、古葉に出会えたからだろう。素直に言うのかと思えば、意外にもはっきりしない彼の珍しい一面に、思わず笑みがこぼれる。
「今、割と本気で葛藤中」
「何にですか?」
「龍青の恩を仇で返すか否か」
「古葉さんが化けて出てきても知りませんよ」
けれど、真顔で言うくらいには、彼にも譲れないものがあるのだろう。



