「別に。大したことはしてない。女のお前を床に転がして、俺が悠々とベッドで寝られるような男だと思うのか」
「そうは思っていませんけど……」
「当たり前のことをしたまでだ」
「当たり前……」
にしては、さっきから一つも目が合わないんですけど。
前にもこういうことがあったようなと、思い出したところで、えっ? と思わず声を上げた。
「まさか、疚しいことがあったんですか」
「ねえよ」
「ここまではっきり言われると逆に怪しいって、本当に思うんですね」
「だからねえっつってんだよ」
「じゃあ、私の目を見て言えますよね」
「………………」
足を止めた彼は、振り返ってこちらを見下ろす。思わず見つめ返すと、まるで時が止まったような感覚に陥った。
彼の瞳が、まるで宝石のように綺麗だからか。それとも、それが少しだけ、切なく揺れているように見えたからか。
「ない」
「ならどうして黙ったんですか?」
「どういうことが疚しいに該当するのか、考えてただけだ」
「何かがあったんですか? それも考えるほどの?」
「ないったらない」
「本当に?」
「しつこい。俺が違うって言ってんだから違うんだ」
(なんか、開き直った感じがするんですけど)
でも彼が、ないと。違うと。そう言うのならばそうなのだろう。龍ノ平一石とは、そういう人間だから。



