店長に許可をもらい、暫くの間忘れ物は喫茶店に置きっぱなしにさせてもらうことになった。けれど、次の日が来ても。一週間が過ぎても。一ヶ月が過ぎても。男性がもう一度喫茶店に来ることはなかった。
『すみません。私、そこの喫茶店で働いている者なのですが……』
忘れ物を届けにやってきたのは、とある出版社。こちらの会社の方のお忘れ物かも知れないのでと、美人な受付嬢に渡すと、有り難いことに快く引き取ってくれた。
(でも、もし違った場合は警察に届けた方がいいのかな。それとも、また来店する可能性を見越して、喫茶店で預かった方がいい?)
そんなことを考えながら、数日が経ったある日のこと。
『こっ、この封筒を持ってきてくれたのって君?!』
『はっ、はい?!』
その喫茶店の扉を破壊する勢いでやってきたのが、他でもない今の上司。この時はまだ下っ端社員だった、一石だった。



