「あら伊代ちゃん。どうしてこんなところに?」
「あ。……えっと。お、お邪魔しています」
しかし残念ながら、どうこうできるポテンシャルやスキル全くなかった。明らかな経験不足である。
おはようございますと、そそくさと部屋から出てきた私には、そんな度胸もなければ器量もないのでこの状況を素直に打ち明けることにした。後は野となれ、山となれと。
「イックンの部屋から、オネーサンが現れた。彼女は見るからに動揺している」
「!」
「少し服や髪も乱れているようだ。慌てて直している。もしや何か疚しいことでもあるのかもしれない」
「?!」
しかし、それも小説家目線で分析を行う快慶に阻まれてしまう。終いにはひと頻り「うーん」と悩んでから、ひらめいたと言わんばかりに、きらきらと嬉しそうな顔で笑われた。嫌な予感しかしない。
「うん。明らかに事後だね」
「何変なこと言ってるの!」
「え? だってそうでしょ?」
「断じて違うから。佐裕子さんの前でやめて。誤解されちゃう」
「誤解って? やっぱり、このどうしようもナシ男に伊代ちゃんパクッと食べられ」
「一石さんに限ってそれだけは有り得ませんから!」
「そう? 私ならパクッと食べちゃいたいけど」
「僕も。食べられるものなら。美味しそうだよね、オネーサンって」
「どこを見たらそんなこと言えるの?! というか、そういう問題ではなくて!」



