片付けをしながら、嫌な予感がして顔を上げる。上げた視線の先で目が合うと、「どうかしたのか?」と首を傾げられた。
「あの、一石さん。一言いいですか」
「何だ?」
「私なんかにいちいち構っていたら、体が持ちませんよ。お気遣いは有り難いですが、もう若くないんですし」
「アラフォーを年寄り扱いするな」
そんなこと言われても。どちらかというと、むずむずさせる方が、全面的に悪いだろうに。
「お前を送るためだけに残ってやれるほど、俺も暇人じゃなくなったんだよなー」
彼の左手の薬指に光るそれを視界の端に入れながら、隠れて自嘲する。悪いのは、勝手にむずむずしている方かと。これだから経験のない奴は。
「一石さんは、出会った時から忙しそうでしたよ」
「あの頃はあの頃。今は今で大忙し」
僅かに俯かせた頭に、ぽんと大きな手が乗っかってくる。膨らんだ髪を、そっと押さえ付けるように。
「……短いな」
「みんなには新鮮って言われます。私も久々すぎてまだ慣れません」
「俺はこっちの方が見慣れてるけど」
「いつの話をしてるんですか」
「おっさんだから覚えてねえ」
「ですから、そういう意味で言ったんじゃなくて」
「ついでに俺は短い方が好みかな。若返った感じするから」
「アラサーを年寄り扱いしないでください」



