「別に、取って食おうってわけじゃない。気分が悪くなったらやめろよ。付き合ってくれるのは嬉しいが」
(強要してる自覚はあったんだな)
「ただこれでも、話は聞かないとって思ってたんだ。ずっと」
「……話ですか?」
コンタクトを外し、眼鏡になった一石は「そ。こんな風にじっくり聞いてやれることなかったし」と、缶ビールを呷る。
「しょっちゅう聞いてくれてると思うんですけど」
「そんなことはない。俺は逆に、五年もほったらかしにして申し訳ないと思っていたくらいだ」
「五年、かあ……」
「青崎」
私の落ちた視線が上がってくるのをじっと待ってから、彼はテーブルの上に何通もの封筒を置いた。その差出人たちの名は、嫌でも覚えている。
「……読んだん、ですよね」
「ああ」
「っ、あの。一石さん、私」
「青崎」
ゆっくりと宥めるように名前を呼んだ彼は、私が落ち着くのをじっと待つ。少し気持ちが高ぶってしまったと、小さく謝った。
「別に謝って欲しいわけじゃない。ただ俺は、お前が落ち着いてから、これをお前に渡そうと思ってただけ」
そう言って彼は、テーブルにもう一通封筒を置いた。
『ryusei koba』と書いてある、色の付いた封筒を。
「……こ、れ……」
「もしかしてと思って調べたら、今日の郵便で届いてた」
「今日の郵便で?」
「ああ」
今日は――龍青の命日だから。



