何でも、今度あるという本社主催の受賞パーティーで、佐裕子が祝辞を言うことになったらしい。
「何が悲しくて、クソタヌキたちに祝いを贈らないといけないのよ」
「さ、佐裕子さん。お祝い事ですから……」
専務という肩書きを持つ彼女だが、一歩外へ出れば業界ではかなりの有名人。そのタヌキを差し置いて代表を任されたということは、彼女にとっても素晴らしいことには違いない。
「楽しくもないのににこにこ笑ってなきゃいけないとか、地獄以外の何物でもないわ。癒やしが、圧倒的に癒やしが足りない……」
「青崎の仕事は、美味しそうに食事をするところをこいつに見せること」
「あの、ぽっちゃりの名残が十分と言っていいほどあるので説得力ないですけど、私そんなに食べられませんよ?」
とはいえ、まさか癒やしだけのための仕事とは。
「大丈夫。会場のどこにいても伊代ちゃんのことは見つけられるから」
これでもかと言うほどグッと親指を立てながら、てへっと。ぺろっと舌を出した佐裕子は、直後隣に立っていた一石に激しくど突かれた。
「か弱い女子に手を出すとは、いい度胸じゃないの」
「俺の目に、か弱い女は青崎しか映ってない」
「あんたまさか、私の伊代ちゃんにもそうやって手を出してんじゃないでしょうね」
「誰がいつお前のになった。青崎は俺の部下だ」
「手を出してることは否定しないのね」
彼女のじと目が一石にだけ向いていてよかった。疚しいことなどそもそもあってはならないのだが、敏感乙女心の持ち主兼顔に出やすいと先輩からお墨付きをもらっていた私には、無反応でいられる自信がなかったから。



