完全に余計なことを言った新堂の傘を奪い、それをバッドのように振り回してひっくり返す。いつもの切れがない地味な嫌がらせの記念と言って、新堂はそのままの状態で傘を差していた。
「本当のこと言っただけなのに」
「お前ら、少しは先輩を敬えよ」
余程衝撃発言だったのか、新堂はカッと瞠目した。
「由良野さん、敬って欲しかったんですか」
「どういう意味だこら」
「いえ。敬う要素が全くないというか、寧ろ嫌う要素しかないというか」
「あ?」
「すみません全然気が付かなくって。今までの全部、小学生みたいな愛情の裏返しだったんですね」
「お前の言いたいことはよーくわかった」
顔を引き攣らせながらこめかみに青筋を立てるも物怖じせず、「でもダメですよ」と新堂はさらに続けた。
「そんな好意の寄せ方しても、嫌われる一方だと思います。どう考えても、青崎さんみたいなタイプには逆効果じゃないですか」
「どうしてそこで彼女の名前が出てくるんだ」
「そうやって普段はクールぶってるのに、好きな人相手にはいじめっ子になるんだもんなあ」
「新堂」
「面倒くさいですね、由良野さんって」
「よし、一発殴らせろ。問題ないくらいには、お前は存分にオレの尊厳を傷付けた」
と口では言いつつも、頭にチョップを食らわす手に上手く力が入らない。
「ほんと、たまには素直にならないと、本気で嫌われちゃいますよ? ま、俺的には有り難いですけど。またデートのお誘いしちゃおっかな」
そうか、傘を持っていたからか。そう気付いて自分の傘を放り出し、両側のこめかみをグリグリとねじ込む拳骨は、いい具合に力が入った。



