頭の上に置かれたのは、あたたかい缶コーヒー。
「……あの。由良野さん」
「ん?」
私がコーヒーを飲めないことを知っているのは、一石(と新堂)だけだ。新堂は顔に出やすいから知っていると言っていたけれど、流石にそこまでは目の前の彼も聞いてはいなかったらしい。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
ただ当たり前のことをしただけだ。寧ろ、私の方が彼に感謝をするべきかもしれないのに。
でも、わざわざ用意していてくれた彼の気持ちが嬉しかった。もしかすると、由良野は私が思っているような人ではないのかもしれな――
「いいよ別に。ただの嫌がらせだし」
そこで再び固まった。そして理解した。この人が、結構前から告白現場を目撃していたことに。
「由良野さん! いつから聞いてたんですか!」
「だから場所考えろっつったんだよ」
「私のせいじゃないじゃないのに!」
「人のせいにすんな。自業自得だろ」
そんな理不尽なことがあって堪るか。
「因みに、青崎さんがコーヒーを飲めないことは部署の全員が知ってるから」
「え。うそ」
「言っただろ。顔に出やすいって」
「か、隠してたのに」
「ま、嘘だけど」
「ちょっと由良野さん?!」
この時の私は、まだ知らなかった。怒鳴られる日々が、今度はいじられる日々に変わることを。



