「昔のあんたを知る奴は、あんたがここまでやる男だとは思わなかったはず。私だって、今でも信じられないもの。だから、せっかくここまで来たんだし、そろそろ教えてくれてもいいんじゃない?」
――どうしてあんたは、そこまでして頑張れるの。頑張ろうとするのよ。
「別に。頑張ろうと思って頑張ってるわけじゃないですよ。強いて言うなら」
――ただ、約束を守りたいだけで。
「約束、か。因みにどんなの?」
「言うわけないでしょう」
「かわいくないわね。昔はよく私の後をついて回ってたのに」
「いつの話をしてるんですか」
「ちょっと妬けちゃうわねって話」
「は?」
あんぐりと口を開けた俺の手には、『織世 白檀-byakuDAN orise-』と差出人の名が書かれた茶封筒。
「あの、何の話です?」
「あ。エレベーター来たわよ」
「専務」
「こっちの話」
「はっきり仰ってくれなければわかりません」
「エレベーター」
問い質したかった。けれどそれを我慢して素直に応じる。
静かにエレベーターに乗り込むと、彼女は最上階のボタンを押した。
「私のこと、許さなくていいわ」
「いきなり何の話で」
「だから、先に謝っておく。あんたの全てを応援できなくて、ごめんなさい」
「……仰ってる意味が本当にわかりませんけど」



