その日の仕事を終えたのは、勤務時間を優に二時間超えた頃。『サービス残業だけは絶対にするな!』と、この場にはいないはずの編集長の幻聴が聞こえ始め、大急ぎで帰り支度に取り掛かる。
アルバイトだから、それでも他の人よりは十分早く上がれているのだが、残っているのは私だけ。今日は文芸部署全員が出払っていた。
原因は、担当作家の文学賞受賞、コミック化に映像化、豪華俳優陣による朗読劇と。つまり、稀に見る鰻登りの絶好調であり、部署全体が目を回すほど多忙になっていたからだ。
少しでもフォローができていればと、彼らの処理しきれない雑用を気付かれないように回収しているうち、この半年の間で現状に落ち着いてしまった。本末転倒と言われればそれまでなのだが。



