電話口から返ってくるのは静寂だけ。
それにふっと小さく笑ってから、今一度口を開く。
「そんな風にな、思ってたんだわ。でも俺も年食ったんだろうな。若い奴らが苦しんでいるのを見てると、何とかしてやれねえかって。最近すげえ考える」
『柳一さんでも、考えられたのね』
「その結果が今回の件だ。自分の気持ち優先して飛び出して、悪かった佐裕子」
『お人好しにも程があるのよ。毎度毎度』
『まあ、それがあなたの長所でもあるとこなんだけど』そう言って、彼女は続けて『それで?』と尋ねた。
『此度の若人には手を焼いているみたいじゃない』
「どこがだ。どこを切り取っても世に出して恥ずかしくないくらいの、ちゃんとした若人だろうよ」
『それこそどこがよ。身に染みてわかったでしょう。野田流指導なんてもう時代遅れなのよ。日本好きの外人たちには受けたかもしれないけど、拳で語り合うなんて、今のご時世ではなんて言うか知ってる? パワハラよ。パ・ワ・ハ・ラ』
「あ? あいつは、そんなんじゃねえよ」



