青い青い空

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 台所から聞こえてくる楽しげな声に、一人ほくそ笑む。


『ちょっと、聞いてるの柳一さん』

「いちいち細けえな。お前は俺の母ちゃんか」

『あなたこそ、筋肉で行動するのはやめてよ。こっちは後処理で大変なんだから』

「馬鹿言え。筋肉使わねえでどう行動するってんだよ」

『屁理屈を言えって言ってるんじゃないから。後先考えずに行動しないでって言ってるの。怪我の具合は』

「たんこぶが痛えくらいだ。何ともねえよ」


『それならいいけど』と、電話口で彼女が安堵のため息を落とす。


『以後気を付けるように。そう何度も問題起こされたら困るんだからね。こっちだって限界があるのよ』

「悪かった。ありがとうな佐裕子」

『……ヤケに素直ね。何、また何かやらかしたの? 今度伊代ちゃんのこと泣かしたら、柳一さんといえど本気で許さないわよ』

「時にお前、こんな話知ってるか」


 そう言って、唐突に語り始めた。とある一人の青年が、千以上もの空を千切り歩いた話を。


『一体何を話し出したかと思えば。【青い空】がどうしたの?』

「死の狭間で青年がたどり着いた虹の根元には、九つの色を宿した神が待ち構えていた」

『……何が言いたいのよ』

「何か思い出さないか。あれからもう十五年。まさか、ずっとこのままでいるつもりじゃねえんだろ」