『こっちは帰ってこなくて大丈夫だ。野田さんのこと、宜しく頼む』
一石に連絡を入れたら、こちらの話もそこそこにそう指示をもらったから。
『というか、絶対に帰ってくるな。騒ぎの余韻がまだ残ってるんだ。帰ってこられた方が困る』
加えて、今日一日の監視役を命じられたからだ。終いには、『面倒事を押し付けてすまん』とまで。私的には、諸々から解放されて万々歳だったけど。
「それだと一緒に風呂入らないといけないんですが」
「たまにはいいんじゃないですか? 裸の付き合い的な」
「死んでも嫌です」
(そのフレーズ好きだな……)
「というか、見張っておく必要もないかと」
そう言うと、彼は口元に人差し指を立てる。
すると聞こえてくるのは、ご機嫌そうな鼻歌。
「僕も昼食を食べ損なっていたので大変助かります」
「食べる気満々じゃないですか」
「あと、栄養面に口うるさい青崎さんの手料理というのも、大変気になります」
(うっ……。安かったからって、出来合ばっかり買うんじゃなかった)
買い置きしておいたところで無駄になるだけだと、思ったのが徒になった。だからと言って、大層なものを作れるわけじゃないが。
「右京さんは、普段お料理は……」
「人並み以下には」
(それ、絶対嘘ですよね)
「それで? 何を手伝えば?」
「わ、私、右京さんの手料理が食べたいなー」
「では、いずれ機会があれば」
(それ、機会がない時に言うやつ)
「というか、野郎が作るって言ったら、速攻で野田さん逃亡すると思いますけど」
それだけは困るので、諦めて全力で包丁を動かすことにした。



