「軽度の擦り傷と切り傷と打撲、あとたんこぶですね」
診察室へ通されるなり、目を見開いたまましばらくの間固まった。
「MRIもレントゲンも異常ありませんでした。ただ血液検査の結果、コレステロール値が高いようなので、食事には気を付けるようにお伝えください」
「あ、あの」
「それと、あまり無茶をしないようにと。今回は軽傷で済んだからよかったものの、ナイフを持った人間に拳一つで立ち向かうなんて」
「こ、拳……」
「挙げ句の果てには、ナイフを奪って犯人を叱咤したとか。『男なら、拳で語り合うのが常識だろ』って、いつの時代の人なんですか」
「あ、あはは……」
「終いには、原形留めないほど犯人の顔を殴った挙げ句、その犯人の鼻血を踏んづけてすっころんで頭を打って。あー娘さんですか? 少しは落ち着くようにお父さんによくよく言っておいてくださいね。いつまでも若くないんですから」
「は、はい……」
そう受け答えをしながら診察室から出たあとも、上手く頭の整理ができなくて。
「たく、誰だよ。すっころんだだけで救急車なんか呼びやがった奴は」
「気絶する方が悪いんですよ」
「おい。犯人はお前か右京」
「だったら何か」
ベッドの上で右京に拳骨を食らわしている姿を見て、ようやく医師の言葉を信じることができた。
「お! 青崎、お前も付いててくれたんだってな。心配かけた」
「……です」
「ん? どうした?」
「私、こんな父親は嫌です。絶対、心臓がいくつあっても足りない」
「だから言ったじゃないですか。物好きですねって」
「よくはわからんが、取り敢えず右京。代表してもう一発殴られろ」
「死んでも嫌です」



