「そんなに噂と……【青い空】? だっけ。話似てんの」
「さあ」
「ん」
「どうぞ社割りでお買い求めください」
「ケチ」と吐き捨ててチャーハンを掻っ込み始めた彼も、休憩と呼べるほど昼休みはないようだ。
それならそれで好都合。そもそも、ここに立ち入ることを許しているのは先程の彼女だけ。彼に至っては幾度となく無視を決め込んでも絡んでくるものだから、しょうがなしにこちらが折れたのだ。
さっさと食べてくれ。そして読書の時間を返してくれ。
「そういや話変わんだけど」
(変えなくていいから)
「専務がお前のこと捜してるっぽかったぞ」
「へ?」
寝耳に水な話に、思わず素っ頓狂な声が上がる。
「まあそこまで急ぎじゃないからって、特に何の用かは聞いてないんだけど」
「無茶振りじゃないことを祈る」
「とうとう正社になってくれってとこじゃね?」
「正社にしたところでメリットないでしょう。寧ろリスクだよ」
「どう考えたってメリットしかないだろ。つかリスクって何だよ」
「久賀野くん」
「何?」
「急いでるんじゃなかったっけ」
ハッと息を呑んだ彼は、慌てて壁掛時計に腕時計、ついでに携帯の時計まで確認をした。
そして顔色を酷く悪くした後、物凄い勢いで最後の一滴までラーメンの汁を流し込み、「んじゃまた飲み会で!」と。まだしてもいない約束をさっさと取り付けて、慌ただしく食堂をあとにした。



