喫茶店へ通い始めて、あっと言う間にひと月が経つ。
いつものように何気ない挨拶をして、いつもの席の窓側に座って。いつも頼むのはホットサンドとブレンド。あと、たまに焼きプリン。
「ん?」
「あっ」
(……今、こっちを見た?)
すると、彼女が何故か慌てて席までやってくる。
いきなりのことでこちらも慌てていると、彼女は小声で聞いてきた。
「ホットサンド。今日いつもより長めに焼いちゃって。硬かったかなって」
「……う、ううん。どちらかというとこっちの方が好みかな」
「本当ですか? 嘘吐いてないですか?」
「うん。今度からずっとこれでお願いしたいくらいだよ」
「勿論です! 他には? 何かありますか?」
「……じゃあ、ブレンドをもう少しぬるめでお願いしてもいいかな。こう見えて猫舌なんだ」
すると、彼女はクスクスと笑った。「畏まりました」と、いつもと同じ笑顔で。
きっと彼女にとっては、こんな会話日常茶飯事で、仕事としては些細なことなのだろう。
(……まだ心臓がバクバクしてる)
けれど僕にとってそれは、言葉では到底表すことができないほど幸せで、きらきらと輝く宝石のような時間だった。長年の願いが、とうとう叶ったのだから。



