青い青い空


 驚きに被せるように、大きな音を立てながらバケツをひっくり返したような雨が降り注いだ。

 でも、顔を赤くした彼から目が逸らせられない。耳まで赤くなるのを止められない。心臓が、うるさい。


 それでも何とか引き剥がすように視線を外すと、目の前からは寂しそうな声が落ちた。


「迷惑ですか」

「そ、そういうわけでは」

「なら、少しでいいんで、考えてはもらえないでしょうか」

「し、新堂くん?」


 そっと手を取られた。縋り付くような握り方と強さ、そして。


「……たすけられて、よかった」


 微かな呟きと震えと一緒に。



「ならお前は、時と場所を考えろ」

「いてっ」


 彼の向こう側に見えたその人に、一瞬理解できずに固まる。


「ヘルプとはいえ仕事中だぞ。いい加減にしろ。排水溝に流すぞ」

「す、すみません。つい、青崎さんといたら溢れて来ちゃって」

「ようしわかった。便器に流す」

「ぐえっ。ちょ、由良野さん首。首絞まってます!」


 そしてそのまま、由良野は新堂の首根っこを掴んで引き摺るようにこの場を後にした。


「もうっ。……青崎さん! 返事! いつでも待ってるので!」

「考えろっつったばっかだろ。ちょっとは弁えろ」


 ベシッと頭を叩かれた新堂と由良野の姿は、あっという間に見えなくなった。……が、内心それどころではない。

 あの由良野にもし全て聞かれていたとしたら、どれだけいびられることか。


「……し、しばらく会社休みたい、なあ……」


 ちいさな願望は、土砂降りの雨とサイレンの音にかき消された。