「オレ、青崎さんのこと尊敬してるんだ」
唐突に投げられた褒め言葉に、私は本を抱えながら隣に立つ先輩――由良野 天理 を訝しげに見上げた。いつも隙あらばいびってくるというのに、一体どういう風の吹き回しかと。
「この状況でもボーッとしていられるんだからさ。いっそ羨ましいよね」
「す、すみません!」
慌てて本を置き、すぐに新しい段ボールに手を伸ばす。そこから大量に詰め込まれた本を手に取ると、その帯には【アニメ第2期決定!】と、大々的に書かれていた。
「ここの段ボールの中身全部出して。それが終わったら、次はこっちの段ボールね。ノベルティーと来場特典。雨カバーはそこ」
「わ、わかりました」
甘い顔に反して性格や物言いは少々きつめ。目敏く指摘する点で言えば右京に似ているかも知れないが、彼のような回りくどさはなく直接的。
部署の他の先輩たちと一緒になって陰口を言うことはないが、独り言を本人に聞こえるようによく言うので豆腐メンタルの私とはかなり相性がかなり悪い。
見た目は若そうだが、古葉の担当をしていた頃の一石をよく知る人物の一人で、かなりの古株。そして、紛うことなく一石信者。
今日は、そんな彼――『由良野 天理』が担当している作品が主役のイベントだ。



