「楽しそうなところ悪ぃな」
ようやく手元に戻ってきた本に目を通そうとしたところで、律儀にテーブルをコンコンとノックしたのは、同じく同期の久賀野 遼 。所属は、週刊少年漫画雑誌編集部。
「おい黒瀬。また編集長から呼び出しくらってんぞ」
「またあたしは何したの……」
「俺が知るか。さっさと行ってこい」
「ふぁい……」
すっかりやる気の削がれた様子でふらふらと立ち上がった彼女は、落とした唐揚げを寂しそうな顔で拾いながら食堂をあとにした。
「編集長にちょっと聞いたけど、ただ聞きたいことがあっただけだってさ」
入れ違いに座った彼は、彼女を見送る私の視線に一言そう付け加えた。彼のトレーには、みそラーメンにCセットのチャーハンと餃子が。
そっかと。本に視線を戻しながら頷こうとしたところで、高校球児出身の筋肉質と小麦色の肌が目に入る。



