元気になったようで何よりですと、跳ねた毛先を弄りながら窓の外に視線を流す。
信号が点滅して、部活帰りの学生たちが横断歩道を駆けていく。一人、渡り損ねた子の足元で水がパシャリと跳ねた。水溜まりには空と雲が、まるで鏡のように映っている。外は、よく晴れていた。
「歳は、三十代後半くらいだったと思う。いつもスーツを着てたよ」
「少女漫画のヒーローにしては年齢が高いか。いやそれならいっそ大学生まで設定引き下げて……」
「常連さんでね。いつもブレンドとホットサンド。あと、たまに焼きプリン」
「親しくなったりしなかったの? ラブい展開は?」
「いつもパソコン開いて忙しそうにしてたし。仕事の邪魔はしないよ」
「真面目か」
こっちだって、アルバイトとはいえ仕事をしていたのだから、極普通の、そして極当たり前の行動だろう。
手持ち無沙汰だった私は、お茶を啜りながら思った。その言葉は、今メモ帳に鉛筆を走らせているあなたにこそ、そっくりそのままお返しするべきだろうと。



