青い青い空




 どこか腑に落ちない気分でいると、「それでは失礼します」とさっさと立ち去ろうとする彼の背中に思わず、帰るんですか? と声をかける。


「ハイ?」

(な、何故怒って……)

「青崎さんお疲れなんですよね」

「でもこの機会を逃してしまったら、今度はいつになるかわからないので」


 そう答えた私に、右京は思いきり怪訝な顔を向けた。顔にははっきりと「何を言っているのかわからない」と書いてある。


(そう言う意味で言ったわけじゃない? だったらさっきのは本当にただの演技のうちの一つで、あんな風にわざと言ったってこと?)


 どれだけ人がいいのと、思わず笑みがこぼれた。


「今まで何度も助けていただいたので。せめてものお礼に、今夜の夕食を奢らせてもらうことは? 勿論ご迷惑でなければの話ですが」


 驚いたように、彼が目を瞠ったのも一瞬のこと。


「わかりました」


 仕方がないですねと言わんばかりに、ふっと彼は苦笑を漏らした。



「では、今夜は僕の好きな店でも?」

「はい、勿論です」


 そう頷いたところで、ふと疑問が湧いた。

 彼は今、どういう意図で『今夜()』と言ったのだろうかと。


「では、行きましょうか」

「その前にすみません」


「勿論ですよ」と言ってくれた彼は、それが何のことなのかもわかっているのだろう。苦笑を浮かべながら、いつもと同じように電話を掛けた。