「どういうこと?」という視線を向けられるが、ただお礼をさせてもらうだけだということをどう伝えればいいかわからず、取り敢えず全力で首を傾げておく。
「僕、女性のハートを射止めるための手段は選ばないんです」
「……?」
「勿論良識の範囲で。嫌われては困りますが、貴重な時間は無駄にしない主義なので」
「…………??」
再び「どういうことだよ。振りじゃねえの?」という視線を向けられるが、それこそ本気で意味がわからないので全力で首を振った。
「……夜遅くまで、女性を連れ回すようなことは頂けないよ」
(あ。顔が諦めた)
「承知しています。そちらについても良識の範囲内で。これは、ほんの少しでも伊代さんと一緒にいたいという僕の我が侭なので」
「う、右京さん? ちょっと……」
もう演技は必要ないので。編集長諦めてくれたので。こ、これ以上引き寄せなくて大丈夫なので……!
「帰りはきちんと、家まで送り届けてくれよ。俺の大事な部下だから」
「ええ。勿論ですよ」
「へ、編集長……!」
売ったんですか。この明らかに変な人に売ったんですか!
若干の涙目でそう訴えるものの、「じゃ。青崎、また明日な」と、一石は逃げるようにしてエレベーターから去って行った。
(……別に、本当に、何の意味もないんだけど)
時間が取れた時に、ちゃんと説明しておこうと思う。



