「でもまさか、今の奴がねえ」と、彼は頬杖を突く。その向こうの窓の外には、そよかぜに揺れるチューリップが綺麗に並んで咲いていた。
「……で?」
「で? とは」
「いるだろ? 練習台」
「予定はありませんので」
「ちぇ。つまんねえの」と、あっさり引き下がった彼も、本気では言っていなかったようだ。これでまた変な噂が流れなければ、今はもうそれでいい。
どっと疲れた昼休みだった。
(右京さんも誰かに喋るような人ではなさそうだし)
「にしても、ぱっと見だとハーフには見えねえな」
「……ハーフ?」
「そ。日本と……確か、フランス?」
「ねえ。お願いだからイタリアまで行って土下座してきて」
「あーだな。行く機会があったら、擦れ違う度に頭下げてくる」
冗談でも流石に悪いと思ったのか、「んじゃ、また飲みでな」とあっさり立ち去っていった彼はあまりにもいつも通りで、思わず暫くの間呆気にとられていたが。
「……つ、疲れた……」
昼休みが終わった頃には、今まで感じていた妙なざわざわ感も、じろじろと見られる視線も、なくなっていた。



