これで十分説明責任は果たしただろう。そう思って、『勢野 黄三郎-kisaburo SeyA-』と送り主の名が書かれた封筒を鞄の中に収めながら、今度こそ日課の読書をしようとしたのだが。そこで話は終わらなかった。
「なら、本命は誰なんだよ」
「はい?」
何をふざけたことをと、初めは適当にいなそうとした。けれど、真剣な目でこちらをじっと見ていた久賀野に、開き書けていた本は閉じるしかなかった。
それはそれでいいとするにしても、ならとはどういう意味だ。
「ウチの社の七不思議の一つだよね。女性社員は必ずこの三人の中の一人には絶対恋に落ちるって」
そんな七不思議初めて聞きましたけど。
「じゃあ、黒瀬ちゃんは誰に恋に落ちたの」
「え? 野田支部長だけど」
意外や意外。ただ、娘の立場からすると、それはちょっと聞き捨てならないのだが。
「あたし筋肉が好きだからさ。本人の中身知ってからは、もうすっかり興味なくなったけど」
むっ、娘の立場からすると、それもちょっと聞き捨てならないのだが。
「あれ? でもこれ結構あるあるじゃない? 男子もだよね?」
「専務に落ちるって話? それ、男だけじゃなくて女もいるって聞いたことあるぞ俺」
だから、そんな七不思議どこから仕入れて来るのよみんな。



