そこでようやく食堂に入った時の違和感の正体がわかったのだが、どうやらそれが主な原因ではなかったようで。
『ちょっとちょっと青崎ちゃん。龍ノ平編集長と痴話喧嘩したんだって? 早く仲直りしなよ? 夫婦喧嘩は犬も食わないんだから』
『おい青崎。色仕掛けでとうとう了安彗星先生を落としたってどういうことだよ。説明しろ』
『ま、それに加えて野田さんとも夜遅くまで飲んでいたみたいですけどね』
(独り言は聞こえない程度に言ってもらえると)
取り敢えず、同期が聞いた噂に尾鰭も脚色も付き過ぎだったので、一体どこから説明したもんかと言ったところで冒頭へと戻るわけだ。
「この際はっきり言わせてもらうけど私、了安先生も一石さんも、ついでに言うと野田さんも手玉に取った覚えは一切ないからね。寧ろ遊ばれてるのこっちだから」
一石に至っては、度を過ぎた過保護なだけ。今回の件も、痴話喧嘩なんかじゃなくてただ部下を叱りつけただけに過ぎない。
了安に限っては、完全に私を困らせて楽しんでいるだけだ。その分困っている時も助けてはくれるけど。今回のコンテスト選考メンバーとして協力してくれたのがいい例だ。
野田とは、親子のような関係なだけ。父親が娘を、娘が父親を心配したりされたり、話をしたり聞いたりするのは普通のことだろう。



